創世記41-42 ; マタイ12:1-23

創世記

第41章

41:1二年の後パロは夢を見た。夢に、彼はナイル川のほとりに立っていた。41:2すると、その川から美しい、肥え太った七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。41:3その後、また醜い、やせ細った他の七頭の雌牛が川から上がってきて、川の岸にいた雌牛のそばに立ち、41:4その醜い、やせ細った雌牛が、あの美しい、肥えた七頭の雌牛を食いつくした。ここでパロは目が覚めた。41:5彼はまた眠って、再び夢を見た。夢に、一本の茎に太った良い七つの穂が出てきた。41:6その後また、やせて、東風に焼けた七つの穂が出てきて、41:7そのやせた穂が、あの太って実った七つの穂をのみつくした。ここでパロは目が覚めたが、それは夢であった。41:8朝になって、パロは心が騒ぎ、人をつかわして、エジプトのすべての魔術師とすべての知者とを呼び寄せ、彼らに夢を告げたが、これをパロに解き明かしうる者がなかった。
41:9そのとき給仕役の長はパロに告げて言った、「わたしはきょう、自分のあやまちを思い出しました。41:10かつてパロがしもべらに向かって憤り、わたしと料理役の長とを侍衛長の家の監禁所にお入れになった時、41:11わたしも彼も一夜のうちに夢を見、それぞれ意味のある夢を見ましたが、41:12そこに侍衛長のしもべで、ひとりの若いヘブルびとがわれわれと共にいたので、彼に話したところ、彼はわれわれの夢を解き明かし、その夢によって、それぞれ解き明かしをしました。41:13そして彼が解き明かしたとおりになって、パロはわたしを職に返し、彼を木に掛けられました」。
41:14そこでパロは人をつかわしてヨセフを呼んだ。人々は急いで彼を地下の獄屋から出した。ヨセフは、ひげをそり、着物を着替えてパロのもとに行った。41:15パロはヨセフに言った、「わたしは夢を見たが、これを解き明かす者がない。聞くところによると、あなたは夢を聞いて、解き明かしができるそうだ」。41:16ヨセフはパロに答えて言った、「いいえ、わたしではありません。神がパロに平安をお告げになりましょう」。41:17パロはヨセフに言った、「夢にわたしは川の岸に立っていた。41:18その川から肥え太った、美しい七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。41:19その後、弱く、非常に醜い、やせ細った他の七頭の雌牛がまた上がってきた。わたしはエジプト全国で、このような醜いものをまだ見たことがない。41:20ところがそのやせた醜い雌牛が、初めの七頭の肥えた雌牛を食いつくしたが、41:21腹にはいっても、腹にはいった事が知れず、やはり初めのように醜かった。ここでわたしは目が覚めた。41:22わたしはまた夢をみた。一本の茎に七つの実った良い穂が出てきた。41:23その後、やせ衰えて、東風に焼けた七つの穂が出てきたが、41:24そのやせた穂が、あの七つの良い穂をのみつくした。わたしは魔術師に話したが、わたしにそのわけを示しうる者はなかった」。
41:25ヨセフはパロに言った、「パロの夢は一つです。神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。41:26七頭の良い雌牛は七年です。七つの良い穂も七年で、夢は一つです。41:27あとに続いて、上がってきた七頭のやせた醜い雌牛は七年で、東風に焼けた実の入らない七つの穂は七年のききんです。41:28わたしがパロに申し上げたように、神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。41:29エジプト全国に七年の大豊作があり、41:30その後七年のききんが起り、その豊作はみなエジプトの国で忘れられて、そのききんは国を滅ぼすでしょう。41:31後に来るそのききんが、非常に激しいから、その豊作は国のうちで記憶されなくなるでしょう。41:32パロが二度重ねて夢を見られたのは、この事が神によって定められ、神がすみやかにこれをされるからです。41:33それゆえパロは今、さとく、かつ賢い人を尋ね出してエジプトの国を治めさせなさい。41:34パロはこうして国中に監督を置き、その七年の豊作のうちに、エジプトの国の産物の五分の一を取り、41:35続いて来る良い年々のすべての食糧を彼らに集めさせ、穀物を食糧として、パロの手で町々にたくわえ守らせなさい。41:36こうすれば食糧は、エジプトの国に臨む七年のききんに備えて、この国のためにたくわえとなり、この国はききんによって滅びることがないでしょう」。
41:37この事はパロとそのすべての家来たちの目にかなった。41:38そこでパロは家来たちに言った、「われわれは神の霊をもつこのような人を、ほかに見いだし得ようか」。41:39またパロはヨセフに言った、「神がこれを皆あなたに示された。あなたのようにさとく賢い者はない。41:40あなたはわたしの家を治めてください。わたしの民はみなあなたの言葉に従うでしょう。わたしはただ王の位でだけあなたにまさる」。41:41パロは更にヨセフに言った、「わたしはあなたをエジプト全国のつかさとする」。41:42そしてパロは指輪を手からはずして、ヨセフの手にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の鎖をくびにかけ、41:43自分の第二の車に彼を乗せ、「ひざまずけ」とその前に呼ばわらせ、こうして彼をエジプト全国のつかさとした。41:44ついでパロはヨセフに言った、「わたしはパロである。あなたの許しがなければエジプト全国で、だれも手足を上げることはできない」。41:45パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、オンの祭司ポテペラの娘アセナテを妻として彼に与えた。ヨセフはエジプトの国を巡った。
41:46ヨセフがエジプトの王パロの前に立った時は三十歳であった。ヨセフはパロの前を出て、エジプト全国をあまねく巡った。41:47さて七年の豊作のうちに地は豊かに物を産した。41:48そこでヨセフはエジプトの国にできたその七年間の食糧をことごとく集め、その食糧を町々に納めさせた。すなわち町の周囲にある畑の食糧をその町の中に納めさせた。41:49ヨセフは穀物を海の砂のように、非常に多くたくわえ、量りきれなくなったので、ついに量ることをやめた。
41:50ききんの年の来る前にヨセフにふたりの子が生れた。これらはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが産んだのである。41:51ヨセフは長子の名をマナセと名づけて言った、「神がわたしにすべての苦難と父の家のすべての事を忘れさせられた」。41:52また次の子の名をエフライムと名づけて言った、「神がわたしを悩みの地で豊かにせられた」。
41:53エジプトの国にあった七年の豊作が終り、41:54ヨセフの言ったように七年のききんが始まった。そのききんはすべての国にあったが、エジプト全国には食物があった。41:55やがてエジプト全国が飢えた時、民はパロに食物を叫び求めた。そこでパロはすべてのエジプトびとに言った、「ヨセフのもとに行き、彼の言うようにせよ」。41:56ききんが地の全面にあったので、ヨセフはすべての穀倉を開いて、エジプトびとに売った。ききんはますますエジプトの国に激しくなった。41:57ききんが全地に激しくなったので、諸国の人々がエジプトのヨセフのもとに穀物を買うためにきた。

第42章

42:1ヤコブはエジプトに穀物があると知って、むすこたちに言った、「あなたがたはなぜ顔を見合わせているのですか」。42:2また言った、「エジプトに穀物があるということだが、あなたがたはそこへ下って行って、そこから、われわれのため穀物を買ってきなさい。そうすれば、われわれは生きながらえて、死を免れるであろう」。42:3そこでヨセフの十人の兄弟は穀物を買うためにエジプトへ下った。42:4しかし、ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄弟たちと一緒にやらなかった。彼が災に会うのを恐れたからである。42:5こうしてイスラエルの子らは穀物を買おうと人々に交じってやってきた。カナンの地にききんがあったからである。
42:6ときにヨセフは国のつかさであって、国のすべての民に穀物を売ることをしていた。ヨセフの兄弟たちはきて、地にひれ伏し、彼を拝した。42:7ヨセフは兄弟たちを見て、それと知ったが、彼らに向かっては知らぬ者のようにし、荒々しく語った。すなわち彼らに言った、「あなたがたはどこからきたのか」。彼らは答えた、「食糧を買うためにカナンの地からきました」。42:8ヨセフは、兄弟たちであるのを知っていたが、彼らはヨセフとは知らなかった。42:9ヨセフはかつて彼らについて見た夢を思い出して、彼らに言った、「あなたがたは回し者で、この国のすきをうかがうためにきたのです」。42:10彼らはヨセフに答えた、「いいえ、わが主よ、しもべらはただ食糧を買うためにきたのです。42:11われわれは皆、ひとりの人の子で、真実な者です。しもべらは回し者ではありません」。42:12ヨセフは彼らに言った、「いや、あなたがたはこの国のすきをうかがうためにきたのです」。42:13彼らは言った、「しもべらは十二人兄弟で、カナンの地にいるひとりの人の子です。末の弟は今、父と一緒にいますが、他のひとりはいなくなりました」。42:14ヨセフは彼らに言った、「わたしが言ったとおり、あなたがたは回し者です。42:15あなたがたをこうしてためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。末の弟がここにこなければ、あなたがたはここを出ることはできません。42:16あなたがたのひとりをやって弟を連れてこさせなさい。それまであなたがたをつないでおいて、あなたがたに誠実があるかどうか、あなたがたの言葉をためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。あなたがたは確かに回し者です」。42:17ヨセフは彼らをみな一緒に三日の間、監禁所に入れた。
42:18三日目にヨセフは彼らに言った、「こうすればあなたがたは助かるでしょう。わたしは神を恐れます。42:19もしあなたがたが真実な者なら、兄弟のひとりをあなたがたのいる監禁所に残し、あなたがたは穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。42:20そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたの言葉のほんとうであることがわかって、死を免れるでしょう」。彼らはそのようにした。42:21彼らは互に言った、「確かにわれわれは弟の事で罪がある。彼がしきりに願った時、その心の苦しみを見ながら、われわれは聞き入れなかった。それでこの苦しみに会うのだ」。42:22ルベンが彼らに答えて言った、「わたしはあなたがたに、この子供に罪を犯すなと言ったではないか。それにもかかわらず、あなたがたは聞き入れなかった。それで彼の血の報いを受けるのです」。42:23彼らはヨセフが聞きわけているのを知らなかった。相互の間に通訳者がいたからである。42:24ヨセフは彼らを離れて行って泣き、また帰ってきて彼らと語り、そのひとりシメオンを捕えて、彼らの目の前で縛った。42:25そしてヨセフは人々に命じて、彼らの袋に穀物を満たし、めいめいの銀を袋に返し、道中の食料を与えさせた。ヨセフはこのように彼らにした。
42:26彼らは穀物をろばに負わせてそこを去った。42:27そのひとりが宿で、ろばに飼葉をやるため袋をあけて見ると、袋の口に自分の銀があった。42:28彼は兄弟たちに言った、「わたしの銀は返してある。しかも見よ、それは袋の中にある」。そこで彼らは非常に驚き、互に震えながら言った、「神がわれわれにされたこのことは何事だろう」。
42:29こうして彼らはカナンの地にいる父ヤコブのもとに帰り、その身に起った事をことごとく告げて言った、42:30「あの国の君は、われわれに荒々しく語り、国をうかがう回し者だと言いました。42:31われわれは彼に答えました、『われわれは真実な者であって回し者ではない。42:32われわれは十二人兄弟で、同じ父の子である。ひとりはいなくなり、末の弟は今父と共にカナンの地にいる』。42:33その国の君であるその人はわれわれに言いました、『わたしはこうしてあなたがたの真実な者であるのを知ろう。あなたがたは兄弟のひとりをわたしのもとに残し、穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。42:34そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたが回し者ではなく、真実な者であるのを知って、あなたがたの兄弟を返し、この国であなたがたに取引させましょう』」。
42:35彼らが袋のものを出して見ると、めいめいの金包みが袋の中にあったので、彼らも父も金包みを見て恐れた。42:36父ヤコブは彼らに言った、「あなたがたはわたしに子を失わせた。ヨセフはいなくなり、シメオンもいなくなった。今度はベニヤミンをも取り去る。これらはみなわたしの身にふりかかって来るのだ」。42:37ルベンは父に言った、「もしわたしが彼をあなたのもとに連れて帰らなかったら、わたしのふたりの子を殺してください。ただ彼をわたしの手にまかせてください。わたしはきっと、あなたのもとに彼を連れて帰ります」。42:38ヤコブは言った、「わたしの子はあなたがたと共に下って行ってはならない。彼の兄は死に、ただひとり彼が残っているのだから。もしあなたがたの行く道で彼が災に会えば、あなたがたは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう」。


マタイ

第12章

12:1そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通られた。すると弟子たちは、空腹であったので、穂を摘んで食べはじめた。12:2パリサイ人たちがこれを見て、イエスに言った、「ごらんなさい、あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています」。12:3そこでイエスは彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えたとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのか。12:4すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほか、自分も供の者たちも食べてはならぬ供えのパンを食べたのである。12:5また、安息日に宮仕えをしている祭司たちは安息日を破っても罪にはならないことを、律法で読んだことがないのか。12:6あなたがたに言っておく。宮よりも大いなる者がここにいる。12:7『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か知っていたなら、あなたがたは罪のない者をとがめなかったであろう。12:8人の子は安息日の主である」。
12:9イエスはそこを去って、彼らの会堂にはいられた。12:10すると、そのとき、片手のなえた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に人をいやしても、さしつかえないか」と尋ねた。12:11イエスは彼らに言われた、「あなたがたのうちに、一匹の羊を持っている人があるとして、もしそれが安息日に穴に落ちこんだなら、手をかけて引き上げてやらないだろうか。12:12人は羊よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日に良いことをするのは、正しいことである」。12:13そしてイエスはその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、ほかの手のように良くなった。12:14パリサイ人たちは出て行って、なんとかしてイエスを殺そうと相談した。12:15イエスはこれを知って、そこを去って行かれた。ところが多くの人々がついてきたので、彼らを皆いやし、12:16そして自分のことを人々にあらわさないようにと、彼らを戒められた。12:17これは預言者イザヤの言った言葉が、成就するためである、
12:18「見よ、わたしが選んだ僕、
わたしの心にかなう、愛する者。
わたしは彼にわたしの霊を授け、
そして彼は正義を異邦人に宣べ伝えるであろう。
12:19彼は争わず、叫ばず、
またその声を大路で聞く者はない。
12:20彼が正義に勝ちを得させる時まで、
いためられた葦を折ることがなく、
煙っている燈心を消すこともない。
12:21異邦人は彼の名に望みを置くであろう」。
12:22そのとき、人々が悪霊につかれた盲人のおしを連れてきたので、イエスは彼をいやして、物を言い、また目が見えるようにされた。12:23すると群衆はみな驚いて言った、「この人が、あるいはダビデの子ではあるまいか」。


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